県政ニュース68号2018年春

平成30年2月定例会で本会議代表質問を行ないました。以下にその要旨を掲載いたします。

熊本地震から2年を迎えるにあたって

(1)仮設住宅入居期限延長について

(質問)かまたさとる 仮設住宅の入居期限は無条件に延長されない。東日本大震災では、入居期限の最初の1年延長に条件をつけた自治体はなかったが、仮設の入居期限の延長についてどのような考えで延長の要件を定めたのか、被災者の個々の事情を踏まえたうえで対応ができないか。
(答弁)知事 東日本大震災では、地震と津波により広範囲にわたり街そのものが失われる壊滅的な状態となった。そのため高台移転をはじめ大規模な公共事業が必要となるなどその特殊事情を考慮し、一律に延長されるという特例的な扱いとなった。今回は8つの延長要件を定めた。延長を認められなかった方々に対しては、今後の住まいの再建先の確保状況の確認や必要とされる支援策を講じるなど丁寧な対応をとっている。

(2)復旧現場での労働災害防止と法令順守の徹底について

(質問)かまたさとる 県発注の公共工事の復旧現場での労働災害事故防止、長時間労働の問題、および賃金未払いの発生防止についての取組は。
(答弁)土木部長 安全労働については、受注者などに工事現場における安全確保の再徹底を通知する。長時間労働については、工事書類の簡素化をした。賃金未払防止は、建設関係団体へ法令遵守の徹底の通知を行うとともに、労働基準監督署や国土交通省と連携した講習会の開催、施工体制の確保や下請け代金支払いの適正化に向けた指導を行っている。

(3)地域防災力向上の取り組み

(質問)かまたさとる 熊本地震の経験のノウハウを広く県内に広め、地域防災力の底上げを図るための今後の取り組みは。
(答弁)知事公室長 自主防災組織間での顔の見える関係を構築するため、地域の枠を超えた組織のリーダー向けのワークショップや活動が活発な組織の講演会を実施する。防災士の活用については県の地域防災計画や自主防災組織の活動マニュアルに地域防災リーダーとして防災士の役割を明確に位置付けた上で、市町村の防災活動における積極的な活用を促していく。
くまモンイラスト利用の制度改正について
(質問)かまたさとる くまモンのイラスト利用は、熊本のPRや県産品使用を条件に、原則として国内企業に限り無料で利用できたが、今後は海外企業の利用を解禁し、県のPRを求めない代わりに小売価格の5~7%の利用料をとる新制度を導入することになっているが、今回の制度改正の目的と得られる効果は。
(答弁)知事 くまモンの認知度と活躍空間を世界中へ広げ、熊本へのインバウンドの増加や県産品の販路拡大など、県内経済の好循環につなげる。一方でくまモンイラストの不正利用が急増しており、効果的な不正利用防止の仕組みを整備する。
(質問)かまたさとる イラスト利用料収益の一部は県へ分配されるが、その基準を定めておくべき。
(答弁)知事 純利益が出た場合の県への分配についてはアサツーディ・ケイ社と最終調整を行っている。
(質問)かまたさとる 今回の制度改正で影響を受ける県内企業へ支援策を。
(答弁)知事熊本から輸出する商品についてはイラスト利用を無料化する。また海外利用に係る申請受付を県内で行うことで、コストやスピード面で県内企業を後押しする。
(質問)かまたさとる 海外でイラスト利用の許諾業務を行うのは、株式会社アサツーディ・ケイという東京の広告会社だが、なぜ、この会社か。
(答弁)知事 昨年、くまモンの共有空間の更なる拡大を図るため「くまラボ」を設置し、全世界の企業を対象に県との連携による取り組みの募集をした。その際に、今回の内容の提案がアサツーディ・ケイ社からあった。「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」など海外でのキャラクター管理について十分な実績と能力があることなどを高く評価し提案を採用することになった。
化血研の事業譲渡会社への県から出資について
(質問)かまたさとる 化血研は、明治ホールディングス、県内企業7社による地元連合、熊本県が出資する新会社に事業譲渡をする。譲渡される株式会社の株主は、明治グループ49%、熊本の地場企業からなる熊本県企業グループが49%、そして熊本県が2%で、地元経済界と県が議決権の過半数である51%を保有することになる。
議決権の過半数を持つことによって、知事は、雇用の確保、研究者などの人材の確保、熊本における本社機能の維持の3原則が確保されることになると説明しているが、明治側は議決権のない無議決権の株も保有するので、将来、これで議決権を得ることはないのか、または増資して過半数を持つことはあり得ないか。化血研の事業譲渡会社に県が出資する意義と雇用確保の担保について尋ねる。
(答弁)知事 県が2%を出資することで、明治グループと地元企業連合間のバランスをとり、将来の発展的運営と地元での事業継続が可能となる。雇用確保については、県と地元企業連合で議決権の過半数となる51%とする枠組み自体が、化血研の雇用、人材、本社機能を維持・確保するためのものであり、それが最も大きな担保。無議決権株式については将来的に議決権を得ることはない。増資については、会社法上、株主の3分の2以上の決議が必要となる特別事項とされており、地元が一体となっている限り乗り越えることは難しいハードルである。
LGBT施策の推進について

(1)知事の認識について

(質問)かまたさとる LGBTに対しては理解不足から差別・偏見があるので、熊本県でも偏見をなくすための啓発の取り組みを進めるべき。知事のLGBTに関する認識は。
(答弁)知事 性に関する個人の認識や考えについては、決して固定的・絶対的なものでなく多様なもの。この多様性について理解不足や偏見のため、自分のありのままを言えない方々が存在すると認識。LGBTも重要な人権課題の一つであり、関係機関・団体と連携しながら正しい知識や情報を伝えるため研修会の開催や啓発資料の活用など、人権教育・啓発を着実に進める。

(2)性別記載欄の必要性の検討と見直しについて

(質問)かまたさとる 県は様々な手続きの中で県民に性別欄の記載を求めているものがあるが、LGBTの当事者たちが不便を強いられている可能性もある。県が定める各種申請様式の性別記載欄の必要性の検討や見直しを行うべき。
(答弁)環境生活部長 性別記載のあり方は、時代の推移に応じ、適宜、検討が必要。県が性別の記載を求めている各種申請書の状況把握を行う。

(3)県教育委員会の研修の実施状況について

(質問)かまたさとる 先生たちの理解を深めるための取組状況は。
(答弁)教育長 管理職や人権教育主任を対象にした人権教育フォーラムや、地域人権教育指導研修会の中で、「性的マイノリティ」の方々の思いを聞くなど、支援のあり方等を考える研修を実施している。養護教諭等を対象とした研究大会で、専門医を講師に招いた研修も実施されている。各学校でも研修等をとおして教職員一人一人の性の多様性に対する適切な理解促進に努めている。

(4)サポートチームの設置状況について

(質問)かまたさとる 学校には児童生徒や保護者から相談があると思うが、文科省の通知では、相談に対応するための「サポートチーム」を学校内外に作るように記載してあるが、県内の学校の状況は。
(答弁)教育長 各学校においては、児童生徒や保護者からの相談に対して組織的に対応する体制の整備に取り組んでいる。特に性同一性障がいに係る相談に対しては児童生徒の心情や保護者の意向に配慮しつつ、必要に応じて医療機関等とも連携して支援を進めるようにしている。

(5)性暴力被害者に対する職員の理解促進の取り組みについて

(質問)かまたさとる 昨年7月施行の改正刑法で強制性交等罪が新設されて、女性に限っていた性暴力被害者の対象が広がり、性別に問わず適用されることになった。県内の強制性交罪事件の認知件数とそのうちの男性被害者の人数、そして、性暴力被害者に対応する関係職員へのLGBT理解促進への取組みは。

(答弁)警察本部長 県下の強制性交等事件の認知件数は、昨年7月以降13件で男性の被害はありません。性暴力被害に遭われた方の相談窓口電話を「レディース110番」から「性被害相談電話」と名称変更。性犯罪捜査に関する研修の対象を男性職員にも広げる。

旧優生保護法下での強制不妊手術について
(質問)かまたさとる 優生保護法は、遺伝性疾患や知的障害者への不妊手術を認め、本人の同意なしに手術をすることができた。熊本県には強制不妊手術の個人名記載の資料は残っているのか。強制不妊手術を進めてきたことについて知事はどのように考えているか。
(答弁)知事 個人名が記載された関係資料は確認できなかった。「熊本県衛生統計年報」によると246人が手術を受けていて、遺伝性疾患が124人、精神疾患が122人。本人の同意を得ることのない不妊手術は当時としては国全体で行われてきたことだが、現在では考えられないことであり、悲しみを禁じえない。改めて資料が存在していないか、範囲を拡大して全庁的に調査するよう指示した。
再犯防止に向けた県の取組みと再犯防止推進計画の策定について
(質問)かまたさとる 再犯防止の取り組みは就労や住宅の確保、高齢者または障害のある方への支援、薬物依存者への支援など多岐にわたる。関係する県の担当部署や国の機関である熊本保護観察所、そして更生保護に取り組んでいる民間団体などと、再犯防止対策関係機関を構成員とする連絡会議を立ち上げて、実効性がある熊本県再犯防止推進計画の策定に着手すべき。
(答弁)環境生活部長 2月に庁内関係課による計画策定に向けた連絡会議を開催、今後、熊本保護観察所など、県内の関係支援機関を含めた連絡会議を立ち上げ、再犯防止推進計画の策定を進める。
こどもの貧困対策について
(質問)かまたさとる 県は、子どもの生活実態調査を昨年6月から7月にかけて小学校5年生の子どもおよび保護者、中学校2年生の子どもおよび保護者を対象に実施した。子ども達の支援を地域で担っている活動の一つに「こども食堂」があるが、こども食堂関係者に加えて、こどもの支援やシングルマザーの支援を行っている団体も加えて、こどもや親への支援を行っている団体をつなぐ「支援のネットワーク」の構築をすべき。
(答弁)健康福祉部長 新年度の新規事業として、地域全体で子どもや家庭を支えるネットワークづくりを進める。さらに調査結果を市町村単位で詳細に分析し、子どもの居場所づくり等、地域の実情に応じた市町村の取り組みを支援する。
夜間中学の設置について
(質問)かまたさとる 夜間中学校の設置に向けてのこれまでの取り組み状況と今後の取り組みは。
(答弁)教育長 平成27年度に検討会議を立ち上げ、情報収集をしている。引き続き調査研究を進めるとともに市町村教育委員会を対象とした研修会を実施するなど、周知にしっかりと努める。